青藏鉄道・成都発ラサ行T22/23次―中国雑感〔6〕―

2010年1月7日(木)から12日(火)まで5泊6日でチベット自治区ラサ市に旅行しました。ラサ入りの足として、2006年7月に全線開業し、ラサ入りができることになった青藏鉄路(青海チベット鉄道)を利用しました。幸い成都からは隔日運行(1月は奇数日)でラサ行の特快列車が走っています。これがT22/23次です。現在の時刻表は、

成都発20時59分

広元着1時23分 発1時37分

宝鶏着8時8分 発8時22分

蘭州着13時17分 発13時32分

西寧着15時59分 発16時19分

格尓木着2時3分 発2時23分

那曲着12時57分 発13時3分

拉薩着16時40分

となっており、所要時間43時間41分で、開業当初の約48時間と比して、スピードアップされて発着時間も異なります。今回は軟臥下段で1104元です。

成都北駅は駅舎の右端にT22次専用の入口と待合室があり、入口前で検札と身分証明書の検査があります。この検査は厳しく、外国人は旅券とチベット入境許可証(西藏自治区旅游局外国人旅藏確認凾)が必須で、係員はこの両者をデジカメで記録します。この後、持ち物の安全検査があり、待合室に入れます。検札開始は19時40分頃で、長い列を作って待たねばありません。待合室(軟臥専用室なし)は狭く、夏の混雑期には立っても全員が入りきれないでしょう。乗車は20時20分頃からです。

西寧を過ぎる2日目午後までは、私にとっては既知の風景ですから、読書などでのんびりとしていました。本列車にはもちろん食堂車が付いており、車窓を楽しみながら、食事が出来ますし、車内販売の包飯(3菜 15元)も回ってきます。本列車は成都鉄路局所属ですから、列車食堂の中では質は最高です。以上、列車内と設備などに関しては、2007年1月に本列車に乗られた方のWebサイト『日本で予約する青海チベット鉄道(青蔵鉄路)個人旅行記』http://www.japantg.com/tibet/index.htmlが写真付きで詳しく紹介しているので、これに譲ります。ただ、残念なことに、今回は軟臥室内の液晶モニターは全く放映がなく、コンセントも全く通電していませんでした。

写真1は、西寧から青藏鉄道に入り、青海湖にさしかかったところで、ちょうど日没時になったものです。18時11分でした。成都からさらに西に行っており、中国は全土を北京時間で統一しているので、1月初旬でこの日没時間となるのです。

さて、深夜のゴルムドを発車すると、新線部の青藏鉄道に入ります。しかし、深夜なので、玉珠峰(海抜6178m)・世界最高海抜の風火山隧道(全長1338m・入口海抜4905m)・世界最高海抜の不凍泉特大橋(2.95km・海抜4611m)ココシリ高原(西)上の清水河特大橋(全長11.7km・海抜4500m)・長江源頭の沱沱大河橋(全長1389.6m)などの青海省内の鉄道名所は闇に包まれたままで、私も眠りについていました。

7時半過ぎに外を眺めると、まだ闇の中でした。時刻表から、走行距離を計算して、まだ世界最高海抜の唐古拉駅(海抜5068.63m 西寧から1421km・ゴルムドから591km。駅舎・ホームは進行方向左側)までには時間があると思い、夜が明けるのを待ちました。列車内の電光掲示版で、海抜4900m台後半を示しているので、近づいてきたなと思って、ようやく空に明るみが出ましたが、いっこうに駅を確認できず、海抜表示も下がってきました。写真2はまだ日の出前の明るみが差してきたときに進行方向右側に人家を見出して撮ったものです。8時34分でした。後で気がついたのですが、実はすでに闇の中で唐古拉駅を通過していたのです。時刻表から計算される以上のスピードでココシリ高原を駆け抜けていたのです。

やがて夜が明け、列車は順調に走り続けます。托居駅(西寧から1499km)を視認し、完全にチベット自治区に入ったことを確認しました。こんな関係で、唐古拉駅関係の写真がないのです。そこで、錯那湖を待つことにしました。錯那湖湖畔を鉄道が走るのです。錯那湖は努江(ミャンマーでタンルイン川)の源頭湖で、面積約300平方㎞・海抜4800mです。写真3は凍結した錯那湖です。諏訪湖と同様にお神渡りをしているところを撮ったものです。手前には列車の陰が写しこまれています。すでに10時をかなり過ぎていました。

11時過ぎに突然停車しました。崗秀駅(西寧から1632km)でした。電光掲示には臨時停車と出ました。青藏鉄道のゴルムド・ラサ間は単線ですから、行き違いの列車待ちと思い、待っていると、突然、警笛もなく列車が目の前を過ぎるので、あわてて撮ったのがフォトアルバムにあるものです。12時58分でした。後から時刻表で調べると、8時発の蘭州(西寧)行K918次でした。さらに、8時半発の北京西行T28次とも行き違え、12時40分くらいにやっと走り出しました。これで、ココシリ高原を時刻表から計算された走行スピード以上で走り抜けていたことが分かりました。しかし、このようなダイヤは観光列車としての性格を持つ列車としては乗客無視のもので、落第としかいいようがありません。

12時57分、那曲駅(海抜4513m・西寧から1650km・ゴルムドから820km)に着きました。下車客もおり、正式な停車駅であり、列車のドアが開き、ホームに降りることが出来ます。そこで、私もホームに出ました。私にとって未体験の海抜でした。このとき撮ったのが写真4です。駅舎のある進行方向に撮りました。手前の車輌は6号車の軟臥車です(全15輛編成)。駅舎の手前に小さく写っているのが駅を出る降車客です。少しホームを歩き回りましたが、列車に戻っても身体になんの問題も起きませんでした。

時刻通りに発車した列車は順調に走り少しずつ高度を下げていきます。相変わらずチベット高原の風景が続き、周りの山はこれより数百メートル程度しか高くありません。時に集落が現れ、牧畜のヤクなどの姿も見えます。写真5はその一つで、ヤクの群れです。中央左寄りに群れに離れているのが牧畜人です。時間は14時を回っていましたから、古露駅(西寧から1735km)付近かと思います。

終わりも近づいており、風景にも異形なものがなくなり、私も休みモードになりました。時刻表より少し早く、16時32分、拉薩駅(海抜3641m 西寧から1972km・ゴルムドから1142km)に滑り込みました。写真6は、降車後、列車先頭へと歩き、乗ってきたT22/23次を撮ったものです。先頭のディーゼル機関車は青藏鉄道専用機関車(ゴルムド・ラサ間)で、米国ゼネラルエレクトリック製のNJ2型です。なお、駅から出ると、通常は迎えの人々が目に入るものですが、駅広場に接した道から駅舎までは立ち入り禁止で、ここまで100mほど歩いて、はじめて迎えの人と会えます。警備の武装警察の人員が配置されています。

最後に、現在のダイヤでは、以前に比べて、ゴルムド・ラサ間の列車観光にとって不十分となっており、ラサ入りの場合、上海(広州)発T164/165次(T264/265次)がゴルムド発5時32分・ラサ着19時54分が一番といえます。次善は北京西発T27次(ゴルムド4時7分発)でしょう。最悪が蘭州(西寧)発K917次(ゴルムド発1時1分・ラサ着15時8分)です。逆に、ラサ出の場合、最善は8時発(ゴルムド着21時13分)のK918次で、次善が8時30分発のT28次で、最悪が11時15分発(ゴルムド着0時56分)のT24/21次の成都行です。

(2010.01.14)

〔追記〕 フォトアルバム「青藏鉄道・成都発ラサ行T22次」は、https://1drv.ms/f/s!AruGzfkJTqxngpk4oem6Wixqp8FyaQです。

(2011.09.22)

kanazawa45 について

中国に長年にわたり在住中で、現在、2001年秋より、四川省成都市の西南交通大学外国語学院日語系で、教鞭を執っています。 専門は日本中世史(鎌倉)で、歴史関係と中国関係(成都を中心に)のことを主としていきます。
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青藏鉄道・成都発ラサ行T22/23次―中国雑感〔6〕― への2件のフィードバック

  1. より:

    こんばんは。ジュピターです。空の色が、真っ青ですね☆やはり海抜が高いせいでしょうか。列車は、銀河鉄道999かなんかで見たような・・・。美しさにみとれます。何か懐かしいものも感じます。夢のような天空列車ですね。トイレは普通でしたか??

  2. 正大 より:

    ジュピターさん、こんばんは。チベットの冬は乾期で、それこそ雲一つない青空で、成都から来ると、まぶしかったです。トイレは、航空機と同じく、真空式(糞害帽子)のもので、掃除もかなりまめにしていたと、軟臥は乗車率が半分以下だったので、中国国内で利用した列車では一番清潔でした。残念だったのは、記事にも書いたとおり、ダイヤがよくなかったことで、十分に風景を楽しめなかったことです。

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